じゃあ誰がやるのか

 

社会人になる前は、世の中って完璧なものだと勝手に思いこんでいた。大人は何でも考えられるだろうから、世の中に不自由なことなんてないんだろうと思っていた。でも、実際はそんなにうまくいっていないことが、会社に入ってから分かった。物や仕組みを考えたり作ったりしているのはすべて人間だし、何でもできる天才なんてめったにいない。世の中の色んなことが地道な仕事によって実現されているのだから、なんでもかんでも完璧に考えられているなんてことはない。

そう気が付いたきっかけとしては、例えば、普段仕事をしていると、なぜ今までこれがやられていないんだろう、と感じることが多い。明らかに管理しておくべき書類が管理されていない、明らかに自動化すべきことがされていない、机の配置を変えた方がいい、など、本業から外れる細かいことまで挙げていけばキリがない。会社にはそんなことをやる担当の人が必ずいるわけではなくて、だからこそそれが今までできていないのであって、じゃあ誰がやるのという話になる。どんな小さなことだって、誰かが先導して、誰かが時間をかけることで実現できるのだから、普段の業務のかたわら、そんな面倒なことをする人がいなくてもおかしくない。もしそれが、会社にとって絶対に必要なことであれば、すぐにチームや部署が編成されたり、そのためにたくさんの業務時間を割けるはずだけど、何でもかんでもそうはいかないだろう。

 「じゃあ誰がやるんだろう」と考えるとき僕は、『あひるの空』という漫画のあるシーンを必ず思い出す。

 

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出展:あひるの空 コミックス22巻 

 あひるの空は、高校生たちの青春バスケ漫画。その漫画に登場する、とある高校の男子バスケ部が試合の前半で大差をつけられてしまったときに、男バス部員の一人が、同じ高校の女子バスケ部の子に思いっきり怒鳴られます。男子部員の子は、やる気のないチーム変えたいと思っていたが、キャプテンでもないので、行動には移せなかった。女子部員の子は、その男の子が勝ちたいと強く思っていることを知っていた。そのうえで、バシッと一言。

『チームの中で一番勝ちたいと願ってる奴がやるもんなんだよ』

 (出展:あひるの空 コミックス22巻)

 本当に勝ちたいと思ってるなら、お前が声を出せと。お前がチームを引っ張れと。そこに役職は関係ねえと、そういうことだと思う。

僕もチームスポーツをやっていたから、これは非常に共感した。チームというのはどうしても、それぞれが自分勝手になったり、人任せになってしまうことがある。これは仕方ない。もしチームとして強くなりたいなら、それぞれが仲間のためにどれだけできるかだと思うが、サラリーマンはプロスポーツ選手ではない。もし、誰もやらないけどやるべきこと、があるのなら、それは誰がやるのか。一番やりたいと思っている人だろう。不公平と思うかもしれないけど、でもそこに理由なんてない。ここでやらないと、何も変わらないという現実を考えると、やるしかない。目立ちたくないとか、自分の成果を見られるのが恥ずかしいとか、面倒に巻き込まれたくないという人は、できないかもしれない。でももしかしたら、みんなができること、気付けることじゃないかもしれない。やってみた結果が知りたいのなら、やるべきだろう。

世界は完璧じゃないと言ったけれど、とても便利になっていると思う。どれもこれも、誰かが熱い気持ちをもって、先導したり、手を動かしたりした成果だと思うと、けっこう熱い。

勉強ができるとはどういうことか

大学生の頃、塾講師としてバイトをしていた。個別指導の教室なので、生徒ひとりひとりのことをよく知ることができた。例えば、生徒がどんなことを考えているか、どんな風に学習しているか、回答用紙からは伝わらないことまで、共有することができた。当時のことを思い出しながら、勉強ができるとはどういうことなのか、考えたい。

まず、生徒がどんな風に学習をしていくか、これが重要だと思った。よく勉強ができた(と思われる)2人の生徒は、こんな感じだった。

Aさん:問題を解いたら、とにかくパターン化(一般化して、グループ化)をしたがる。問①は、こういう解き方。問②はその派生。問③は①の逆のことをしているだけ。という感じ。頭を整理したがる子。逆に言うと、要点だけ押さえて、余計なことをインプットしたくない子。

Bさん:Aさんほどじゃなくても、数問解いてみた後にボソッと、「よく分からないけど、いま何回か同じようなことをやった気がする。」と一言。そうそうそう、そうなんだよ。自分の力では言葉にできないのかもしれないけど、法則がありそうだと勘づけるタイプの子。

もし「勉強ができるかどうか」という境界線をどこかに1本引くとしたら、個人的には、「問題の一般化ができるか」どうかだと思う。簡単に思えるかもしれないが、例えば公式のように、一般的な事実から教わっていたとしても、問題を解いていくなかで、頭の中は具体的な方に引っ張られてしまう。いつだって「4×3÷2」じゃなくて、「(底辺)×(高さ)÷2」と考えられることが重要。(ただし、自由な発想が評価される世界においては、一般化はそこまで重要でないかもしれない。)

じゃあ、物事を一般化して考えられるようになるには、どうすればいいのか。これは、小さい頃から、自分で考えて何かを改善する、という経験をすることだと思う。なにか問題が起きたときには、個別に対処するよりも一般化した状態で対処できた方が、問題をいくつかまとめて解決できたり、物事の効率や質を飛躍的に上げることができると思う。そして、大人がその答えを簡単に与えてはいけない。手を差し伸べてもらえず、追い込まれている状況だからこそ、乗り越えるべき壁が高くなり、一般化による問題解決の必然性も増すのだと思う。個人差はあれど、やり方を工夫していく中で、一般化という発想が自然と身に着くのだと思う。

「勉強ができるかどうか」と言ったが、この話は仕事にも当てはまると思う。普段何となく働いていると、目の前のことだけに対応してしまうけれど、「〇〇という業務って、実は△△してるだけなんじゃね」とか「□□と同じことなんじゃね」という風に、一歩引いた視点から一般化・単純化・構造化できたりするといい。そして、問題をはっきりさせたり、効果的に解決したりすることができる。複雑な問題や、まだ誰も一般化していない問題を一般化することは、とても難しいことだけど、できる人がいるのは事実だと思う。物事の「極意」とかいうのも、一般化によって生まれるものだと思う。そして、この能力があるかないかというのが、せかせか手を動かすだけの人になるか、頭を使える人になるか、というのを大きく分けることになるのかもしれない、とさえ思う。

仕事がつまらないので、原因を考えてみた

エンジニアとして仕事を始めた頃、与えられた業務に何かつまらなさを感じていた。なぜか分からないけど、やってられない感じがした。別に興味のない分野のエンジニアになったわけではない。技術的におもしろい内容もある。なのに、なぜかモチベーションが上がらない。

頭の中にモヤモヤとしたものを残しておくのが嫌いなので、そのモヤモヤが何なのか紐解いてみることにした。僕は、ほとんど悩むことがない。それは、すぐに「考え」、物事の見方を変えることで、頭と心をスッキリさせるからだと思う。悩むのと考えるのは違う。とにかく物事を進展させたときは、「考える」方がいい。

 まず初めに、エンジニアが行う「エンジニアリング(工学)」とは何なのか、これを調べてみた。ぶっちゃけよく分かっていない。色々調べている中で、一番しっくりきたのはこちらでした。

「理学」が物理学や化学のように世の中の自然の原理を見つけて、説明していく学問であるのに対して、「工学」はそれらに依拠しながらも、「何か役に立つものを」「実現していく」学問です。〔中略〕誰かの曖昧な要求からスタートし、それが具体的で明確な何かに変わっていく過程が実現で、その過程のすべてがエンジニアリングという行為です。つまり、「曖昧さ」を減らし、「具体性・明確さ」を増やす行為が「エンジニアリングとは何か」という答えでもあるのです。

引用元:『エンジニアリング組織論への招待』広木大地(技術評論社)

 

曖昧さを減らしていく行為か、確かにそうかもしれない。じゃあ、自分がやっている仕事はどうなんだろう。振り返ってみた。

まず、ほとんどが過去に誰かしら検討したことのある内容だった。要領が分かっている。曖昧さが少ない。自由度が低いとも言えそう。なのに、そういった不確実でない仕事を、まるで「よく分かっていないことを検討してほしい」というノリで、振られている気がした。曖昧な要求から始まるのは間違いないが、その手段の方は、曖昧なことが何もない。これがオール オブ 現状。若手だから仕方ない部分もあるが、この退屈な業務をどうにかしたいと思った。

まずはやっぱり、本業である「エンジニアリング」にかける時間を増やすべきと思う。そのためには、逆にエンジニアリングと呼べない仕事には、時間をかけるべきでない。もともと不確実性の大きかった仕事でも、徐々に慣れてきて、自信が付き、「標準化(一般化)」ができるようになる。「標準化(一般化)」さえできれば、「自動化」ができる。また、誰か一人でも検討したことがあることなら、標準化して共有すれば、それは部署全体の経験として価値を持つ。そんなこんなで業務を効率化して、浮いた時間を使って、新しいエンジニアリングに挑戦する。これが進むべき道だな、と思った。

 なんとなく、向かう先が見えた感じがして、スッキリした。本業は何かを考え、現状の仕事を深堀りしてみたのが良かった。さっそく、標準化・自動化できそうなことをリストアップしてみた。めっちゃたくさんあった。